大腸カメラ検査とは?前処置・下剤の飲み方・ポリープ切除を徹底解説

大腸カメラ検査とは?基本的な知識をわかりやすく解説

大腸カメラ検査は、正式には「大腸内視鏡検査」と呼ばれ、肛門から内視鏡を挿入し、大腸(直腸から盲腸まで)全体を観察する検査です。大腸がん、大腸ポリープ、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)、大腸憩室などの診断に用いられます。

日本では大腸がんの罹患率が増加しており、男女ともにがん罹患数の上位を占めています。大腸カメラ検査は、大腸がんの早期発見と予防に最も有効な方法です。

便潜血検査で陽性となった場合、精密検査として大腸カメラが実施されます。また、40歳以上の方や大腸がんの家族歴がある方は、症状がなくても定期的な検査が推奨されています。

大腸カメラの大きな利点は、検査中にポリープを発見した場合、その場で切除できることです。大腸がんの多くはポリープから発生するため、ポリープを切除することでがんの予防につながります。

大腸カメラ検査の前日と当日の前処置

大腸カメラ検査で最も重要なのが前処置です。大腸内をきれいにすることで、検査の精度が向上し、小さな病変も見逃さずに発見できます。

検査3日前からの食事制限

多くの医療機関では、検査の3日前から食事制限を指導しています。繊維質の多い食品(海藻、きのこ、こんにゃく、ごぼう、れんこんなど)、種のある果物(キウイ、いちご、トマトなど)、脂っこい料理は避けましょう。

推奨される食品は、白米、うどん、白身魚、豆腐、卵、鶏肉などの消化の良いものです。一部の施設では、検査食(低残渣食)が提供されることもあります。

検査前日の過ごし方

前日の食事は、朝食と昼食は消化の良いものを摂り、夕食は20時までに済ませることが推奨されます。夕食後、指示された下剤(錠剤タイプが一般的)を服用します。

就寝前にも下剤を服用する場合があります。水分は十分に摂取しましょう。アルコールは控え、早めに就寝することが望ましいです。前日の下剤により、夜間に数回排便があるのが正常な経過です。

検査当日朝の下剤服用

検査当日の朝は、自宅または医療機関で腸管洗浄液(下剤)を服用します。最も一般的なのは、約2リットルの経口腸管洗浄液を2~3時間かけて飲む方法です。

15~20分ごとにコップ1杯(約200ml)ずつ、ゆっくりと飲みます。最初は普通の便が出ますが、徐々に水様便となり、最終的には透明な水のような便になれば準備完了です。

下剤(腸管洗浄液)の種類と正しい飲み方

大腸カメラ検査の下剤には、いくつかの種類があります。それぞれに特徴があり、患者の状態や施設の方針に応じて選択されます。

ポリエチレングリコール製剤(モビプレップ、ニフレックなど)

最も一般的に使用される腸管洗浄液です。約2リットルを2~3時間かけて飲むことで、大腸内を洗浄します。味は施設によって異なりますが、レモン味やスポーツドリンク風味などがあります。

飲み方のコツは、冷やして飲むこと、ストローを使って一気に飲み込むこと、鼻をつまんで飲むことなどです。吐き気を感じた場合は、飲むペースを落とし、休憩を挟みながら続けます。

低容量下剤(ピコプレップ、ビジクリアなど)

近年普及している低容量タイプの下剤です。150ml程度の少量の薬液を2回服用し、その後それぞれ1リットルずつ水分を摂取します。飲む量が少ないため、従来の下剤が苦手だった方にも比較的飲みやすいとされています。

ただし、水分摂取が不十分だと腸管洗浄が不十分になる可能性があるため、指示された量の水分をしっかり摂ることが重要です。

下剤服用時の注意点とトラブル対応

下剤を飲んでいる間は、トイレに近い場所で過ごしましょう。服用開始から1~2時間後に排便が始まるのが一般的です。吐き気や腹痛が強い場合は、飲むペースを落とすか、一時中断して医療機関に連絡します。

便が透明にならない場合でも、指示された量を飲み切ることが大切です。便の色が薄い黄色や透明に近い状態になれば、検査可能と判断されます。不安な場合は、来院時にスタッフに確認してもらいましょう。

大腸カメラ検査の流れと所要時間

大腸カメラ検査の全体的な流れを理解しておくことで、当日の不安を軽減できます。検査自体は比較的短時間で終了します。

検査前の準備

来院後、便の状態を確認し、検査可能かどうか判断されます。検査着に着替え、鎮静剤を使用する場合は点滴を挿入します。腹部の張りを軽減する薬を服用することもあります。

検査室に入り、左側を下にして横になります。膝を軽く曲げた姿勢をとることで、内視鏡が挿入しやすくなります。

検査中の流れと所要時間

検査時間は観察のみの場合で15~30分程度、ポリープ切除を行う場合は30~60分程度かかります。肛門から内視鏡を挿入し、まず大腸の最も奥(盲腸)まで進めます。

到達後、ゆっくりと引き抜きながら詳細に観察します。空気を入れて大腸を膨らませるため、腹部の張りや痛みを感じることがありますが、これは正常な反応です。

検査中は、体位を変えることがあります。仰向けやうつ伏せになることで、腸の角度を変えて観察しやすくします。鎮静剤を使用していない場合、医師とコミュニケーションをとりながら検査を進めます。

痛みや不快感が強い場合は、遠慮なく伝えましょう。鎮静剤の追加や体位の調整により、苦痛を軽減できます。

検査後の注意事項

検査終了後は、回復室で休憩します。鎮静剤を使用した場合は、完全に覚醒するまで30分~1時間程度観察が必要です。腹部の張りは、時間とともに自然に軽減されます。

組織採取やポリープ切除を行った場合は、当日のアルコール摂取、激しい運動、長時間の入浴、長距離の移動は避けましょう。食事は検査後1時間程度から可能ですが、消化の良いものから始めます。

大腸ポリープの切除:検査と治療を同時に

大腸カメラ検査の大きな利点の一つが、ポリープを発見した際にその場で切除できることです。これにより、がんへの進行を予防できます。

大腸ポリープとがんの関係

大腸がんの多くは、ポリープ(良性腫瘍)から発生します。ポリープががん化するまでには通常5~10年かかるため、この段階で切除すれば大腸がんを予防できます

特に腺腫性ポリープは、将来がん化するリスクがあるため、発見次第切除することが推奨されます。小さなポリープでも、定期的に観察するか切除するかは、ポリープの大きさや形状、数によって判断されます。

ポリープ切除の方法

5mm以下の小さなポリープは、鉗子(かんし)でつまんで切除する「コールドポリペクトミー」が行われます。10mm以上のポリープは、スネア(ワイヤー状の輪)をかけて高周波電流で焼き切る「内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)」が行われます。

平坦な病変や大きなポリープには、「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」や「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」という、より高度な切除方法が用いられることもあります。

ポリープ切除後の注意事項

ポリープ切除後は、切除部位からの出血リスクがあるため、1~2週間は注意が必要です。激しい運動、重労働、長時間の入浴、アルコール摂取、刺激物の摂取は控えましょう。

抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を服用している方は、出血リスクが高まるため、事前に医師と相談し、休薬の必要性を判断します。切除したポリープは病理検査に出され、良性か悪性かを確認します。

大腸カメラ検査を受けるべき人と推奨頻度

大腸カメラ検査は、すべての人が毎年受ける必要はありませんが、一定のリスク要因を持つ方は定期的な検査が推奨されます。

便潜血検査陽性の方

便潜血検査で陽性(血液反応あり)となった場合は、必ず大腸カメラ検査を受けましょう。便潜血陽性者の約5%に大腸がんが発見され、約30%にポリープが発見されるというデータがあります。

「少量の出血だから大丈夫」と自己判断せず、必ず精密検査を受けることが重要です。

40歳以上の方と家族歴のある方

大腸がんのリスクは40歳以降に増加します。症状がなくても、40歳を過ぎたら一度は大腸カメラ検査を受けることが推奨されます。異常がなければ、その後は3~5年ごとの検査で十分です。

家族に大腸がん患者がいる場合、リスクが2~3倍高まるため、より若い年齢から、より頻繁に検査を受けることが推奨されます。特に親や兄弟姉妹に患者がいる場合は注意が必要です。

症状がある方

血便、便通異常(下痢や便秘が続く)、腹痛、体重減少などの症状がある場合は、年齢に関係なく大腸カメラ検査を受けるべきです。これらの症状は大腸がんだけでなく、さまざまな大腸疾患の可能性を示しています。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の方は、定期的な検査で病気の状態を評価し、がん化の有無を確認する必要があります。

まとめ

大腸カメラ検査は、肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体を観察する検査で、大腸がんやポリープの発見に最も有効です。検査3日前から繊維質の多い食品を避け、前日は20時までに夕食を済ませて下剤を服用します。

当日朝は約2リットルの腸管洗浄液を2~3時間かけて飲み、便が透明になるまで待ちます。

検査時間は15~30分程度で、ポリープ切除を行う場合は30~60分程度かかります。鎮静剤を使用すれば、ほとんど苦痛なく検査を受けられます。

検査中にポリープを発見した場合、その場で切除でき、がんの予防につながります。40歳以上の方、便潜血陽性の方、家族歴のある方は定期的な検査を受け、大腸がんの早期発見と予防に努めましょう。