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胃カメラ検査とは?基本的な知識をわかりやすく解説
胃カメラ検査は、正式には「上部消化管内視鏡検査」と呼ばれ、先端にカメラを装着した細い管(内視鏡)を口または鼻から挿入し、食道・胃・十二指腸の内部を直接観察する検査です。胃がん、食道がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ピロリ菌感染、逆流性食道炎などの診断に用いられます。
バリウム検査と異なり、胃の粘膜を直接観察できるため、わずかな色調変化や小さな病変も発見しやすく、がんの早期発見に優れています。
日本の胃がん検診受診率は年々上昇しており、特に胃カメラ検査を選択する方が増えています。内視鏡技術の進歩により、以前に比べて検査時の苦痛が大幅に軽減されています。
検査中に異常が見つかった場合、その場で組織を採取して病理検査を行うことができます。また、小さなポリープであれば、検査と同時に切除することも可能です。これが胃カメラ検査の大きな利点です。
経口内視鏡と経鼻内視鏡の違いと特徴
胃カメラ検査には、口から挿入する「経口内視鏡」と、鼻から挿入する「経鼻内視鏡」の2つの方法があります。それぞれに特徴があり、患者の状態や希望に応じて選択します。
経口内視鏡の特徴とメリット
経口内視鏡は、直径約9~11mmの内視鏡を口から挿入する従来からの方法です。画像の解像度が高く、詳細な観察が可能で、組織採取やポリープ切除などの処置もスムーズに行えるのが最大のメリットです。
内視鏡の操作性に優れているため、複雑な形状の病変や出血部位の処置にも対応しやすく、精密検査や治療を兼ねた検査に適しています。
デメリットは、舌の根元を通過する際に嘔吐反射(オエッとなる反応)が起こりやすいことです。ただし、鎮静剤を使用することで、この苦痛を大幅に軽減できます。
最近では、経口内視鏡でも細径タイプ(直径5~6mm)が開発され、嘔吐反射を抑えた検査が可能になっています。画質や処置能力を重視する場合は、経口内視鏡が選択されます。
経鼻内視鏡の特徴とメリット
経鼻内視鏡は、直径約5~6mmの細い内視鏡を鼻から挿入する方法です。舌の根元を通過しないため、嘔吐反射がほとんど起こらず、検査中も会話ができるのが大きなメリットです。
鎮静剤を使用しないため、検査後すぐに帰宅でき、仕事に復帰することも可能です。運転制限もないため、車での来院も問題ありません。
デメリットとしては、画質が経口に比べてやや劣ること、内視鏡が細いため処置具の使用に制約があること、鼻腔が狭い方や鼻の病気がある方は挿入が難しい場合があることが挙げられます。
また、鼻出血のリスクがわずかにあります。スクリーニング検査(異常の有無を調べる検査)としては十分な性能を持っており、初めて胃カメラを受ける方や、嘔吐反射が強い方に適しています。
鎮静剤(麻酔)を使用した胃カメラ検査
鎮静剤を使用した胃カメラ検査は、「鎮静下内視鏡」や「セデーション」と呼ばれ、検査時の苦痛や不安を大幅に軽減できる方法として人気が高まっています。
鎮静剤の種類と効果
胃カメラ検査で使用される鎮静剤は、主にベンゾジアゼピン系(ミダゾラムなど)やプロポフォールなどです。意識はあるが眠っているような状態(鎮静状態)になり、検査中の記憶がほとんど残らないことが多いです。
完全な全身麻酔とは異なり、呼びかけには反応できる程度の意識レベルを保ちます。検査時間は通常の胃カメラと同じく5~15分程度ですが、鎮静剤の効果が切れるまで30分~1時間程度の休憩が必要です。
鎮静剤使用のメリットとデメリット
鎮静剤を使用する最大のメリットは、検査中の苦痛や不安がほとんどなく、リラックスした状態で検査を受けられることです。嘔吐反射が強い方や、過去の検査で苦痛を経験した方に特に適しています。
また、患者がリラックスしているため、医師も落ち着いて詳細な観察ができ、検査の質が向上することもメリットです。
デメリットは、検査後しばらく休憩が必要なこと、当日は車の運転ができないこと、稀に鎮静剤の副作用(血圧低下、呼吸抑制など)が起こる可能性があることです。
また、高齢者や持病のある方では、鎮静剤の使用に慎重な判断が必要となる場合があります。鎮静剤を使用する場合は、必ず付き添いの方と来院するか、公共交通機関を利用しましょう。
胃カメラ検査の前日と当日の準備
胃カメラ検査を安全かつ正確に行うためには、適切な前処置が不可欠です。検査前の準備をしっかり行うことで、検査の精度が向上します。
前日の食事と生活習慣
検査前日の夕食は、21時までに済ませることが推奨されます。消化の良い食事を心がけ、油っこい料理、繊維質の多い野菜(ごぼう、きのこ、海藻など)、消化に時間がかかる肉類は控えめにしましょう。
アルコールは胃粘膜に影響を与える可能性があるため、できるだけ避けます。水分は普段通り摂取して構いませんが、就寝前の大量摂取は避けましょう。
当日の過ごし方と注意事項
検査当日の朝は絶食が基本です。食事だけでなく、水やお茶、ガム、飴なども一切摂取してはいけません。少量でも胃に内容物があると、観察の妨げになり、誤嚥のリスクも高まります。
歯磨きは可能ですが、水を飲み込まないよう注意します。喫煙も胃液の分泌を促すため控えましょう。常用薬については、必ず事前に医師に確認し、指示に従います。
服装と持ち物
締め付けの少ない、ゆったりとした服装が望ましいです。メガネ、コンタクトレンズ、入れ歯、アクセサリーなどは検査前に外します。鎮静剤を使用する場合は、付き添いの方の同伴が必要です。
持ち物としては、保険証、診察券、紹介状(ある場合)、常用薬の情報、メガネケースやコンタクトレンズケースなどを準備しましょう。鎮静剤を使用しない場合でも、念のため公共交通機関での来院を推奨します。
胃カメラ検査の流れと所要時間
胃カメラ検査の全体の流れを理解しておくことで、当日の不安を軽減できます。検査自体は短時間ですが、前処置や検査後の観察時間も含めて考える必要があります。
検査前の前処置
まず、消泡剤(白い液体)を飲みます。これは胃の中の泡や粘液を除去し、観察しやすくするための薬です。次に、喉または鼻の麻酔を行います。
経口内視鏡の場合は、喉にスプレー麻酔をした後、麻酔薬を含んだゼリーを数分間口に含みます。経鼻内視鏡の場合は、鼻腔にスプレー麻酔とゼリー状の麻酔薬を注入します。麻酔が効くまで5~10分程度待ちます。
検査中の流れ
検査室に入り、左側を下にして横になります。経口内視鏡の場合は、マウスピースをくわえます。検査時間は通常5~15分程度で、観察のみの場合は5~10分、組織採取を行う場合は15分程度かかります。
検査中は、ゆっくりと鼻から息を吸い、口から吐く呼吸を心がけましょう。力を入れずにリラックスすることが大切です。唾液は飲み込まず、自然に流れ出させます。
検査後の注意事項と結果説明
検査が終了したら、回復室で休憩します。鎮静剤を使用した場合は、30分~1時間程度、完全に覚醒するまで観察が必要です。喉の麻酔が切れるまで(約1時間)は、飲食を控えます。
組織採取を行った場合は、当日のアルコール摂取、激しい運動、長時間の入浴は避けましょう。検査結果は、当日または後日、医師から説明があります。組織検査を行った場合は、結果が出るまで1~2週間程度かかります。
胃カメラ検査で発見できる病気
胃カメラ検査は、さまざまな消化器疾患の診断に有用です。早期発見により、適切な治療を開始することができます。
胃がんと食道がん
胃カメラ検査は、早期胃がんの発見に最も優れた検査方法です。わずかな色調変化や粘膜の凹凸を捉え、バリウム検査では見つけにくい数mm程度の早期がんも発見できます。
食道がんも同様に、早期の段階で発見することで、内視鏡的切除術などの低侵襲治療が可能になります。特にアルコールや喫煙習慣のある方は、定期的な検査が重要です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍とピロリ菌感染
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の診断には、胃カメラが不可欠です。潰瘍の大きさ、深さ、出血の有無を正確に評価でき、ピロリ菌感染の有無も同時に調べることができます。
ピロリ菌は胃がんのリスク要因であるため、感染が確認された場合は除菌治療が推奨されます。除菌後の確認検査も胃カメラで行います。
逆流性食道炎と食道裂孔ヘルニア
逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流して炎症を起こす疾患で、胸やけや呑酸(酸っぱい液体が上がってくる)などの症状があります。胃カメラで食道粘膜の炎症の程度を評価できます。
食道裂孔ヘルニアは、胃の一部が横隔膜を通って胸腔内に脱出する状態で、逆流性食道炎の原因となることがあります。これらは胃カメラで診断し、適切な治療方針を決定します。
まとめ
胃カメラ検査は、内視鏡を口または鼻から挿入し、食道・胃・十二指腸を直接観察する検査です。経口内視鏡は画質が高く処置能力に優れ、経鼻内視鏡は嘔吐反射が少なく会話しながら検査できるという特徴があります。
鎮静剤を使用すれば、ほとんど苦痛なく検査を受けることができますが、検査後の休憩が必要で当日の運転はできません。
前日21時までに夕食を済ませ、当日は絶食・絶飲で臨みます。検査時間は5~15分程度で、喉の麻酔が切れる1時間後から飲食可能です。
胃カメラは早期胃がんや食道がんの発見に優れ、組織採取も可能なため、精密検査として非常に有用です。自分の状況や希望に応じて、検査方法を選択し、定期的な検査を受けることで、消化器疾患の早期発見と予防につなげましょう。










