血圧測定は、健康診断や人間ドックで必ず実施される基本的な検査であり、高血圧の早期発見に欠かせません。
高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状がないまま心筋梗塞や脳卒中などの重大な合併症を引き起こす可能性があります。本記事では、血圧測定の正しい方法、高血圧の診断基準、白衣高血圧の特徴、そして家庭での血圧管理について詳しく解説します。
目次
血圧とは?基本的な知識を理解する
血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の壁に与える圧力のことです。
血圧は、心臓が収縮して血液を送り出すときの「収縮期血圧(最高血圧)」と、心臓が拡張して血液を取り込むときの「拡張期血圧(最低血圧)」の2つの数値で表されます。
血圧の単位は「mmHg(ミリメートル水銀柱)」で、たとえば「120/80mmHg」と表記されます。
この場合、収縮期血圧が120mmHg、拡張期血圧が80mmHgという意味です。血圧は一日の中でも変動し、活動や感情、時間帯によって変化します。
血圧が重要な理由
適正な血圧を維持することは、健康を守るために非常に重要です。高血圧が続くと、動脈硬化が進行し、心筋梗塞、脳卒中、心不全、腎不全などのリスクが高まります。
一方、低血圧の場合は、めまいや立ちくらみ、倦怠感などの症状が現れることがあります。
高血圧は自覚症状がほとんどないため、定期的な血圧測定が早期発見の鍵となります。
特に、家族に高血圧の方がいる場合、肥満、運動不足、塩分の多い食事、喫煙、過度の飲酒などのリスク因子がある場合は、より注意が必要です。
血圧の正常値と高血圧の診断基準
診察室血圧の基準値
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」によると、診察室で測定した血圧の基準は以下の通りです。
正常血圧は収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満とされています。正常高値血圧は120~129/80mmHg未満、高値血圧は130~139/80~89mmHgです。
高血圧の診断基準は、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上です。
さらに、高血圧はⅠ度(140~159/90~99mmHg)、Ⅱ度(160~179/100~109mmHg)、Ⅲ度(180/110mmHg以上)に分類されます。血圧が高いほど、心血管疾患のリスクが高くなります。
家庭血圧の基準値
家庭で測定した血圧の基準値は、診察室での測定値よりも低く設定されています。
家庭血圧での高血圧の基準は、収縮期血圧135mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上です。家庭血圧の正常値は125/80mmHg未満とされています。
家庭血圧は、診察室血圧よりも日常生活での実際の血圧を反映しており、予後予測においてより重要とされています。
また、家庭血圧を継続的に測定することで、血圧の変動パターンや治療効果を詳しく把握できます。
血圧測定の正しい方法
診察室での測定方法
診察室での血圧測定は、通常、上腕式の自動血圧計または水銀血圧計を使用して行われます。
測定前には、5分程度安静にしてリラックスすることが重要です。カフェインやアルコールの摂取、喫煙は測定前30分以上避けるべきです。
測定時は、背もたれのある椅子に座り、足を床につけ、腕は心臓と同じ高さに保ちます。
カフ(腕帯)は素肌に直接巻くか、薄手の衣服の上から巻きます。厚手の服の上から測定すると、正確な値が得られません。測定中は会話を避け、リラックスした状態を保ちます。
家庭での測定方法
家庭血圧の測定は、朝と夜の1日2回行うことが推奨されています。
朝は起床後1時間以内、排尿後、朝食前、服薬前に測定します。夜は就寝前に測定します。それぞれ2回ずつ測定し、その平均値を記録します。
家庭用血圧計は、上腕式が最も正確で推奨されています。手首式や指式は、測定位置によって誤差が生じやすいため注意が必要です。
カフのサイズも重要で、腕周りに合ったサイズを選ぶことで正確な測定ができます。測定値は必ず記録し、受診時に医師に見せることが大切です。
正確な測定のためのポイント
正確な血圧測定のためには、いくつかの重要なポイントがあります。
まず、測定前には少なくとも5分間安静にし、深呼吸をしてリラックスすることが大切です。緊張していると血圧が高く出ることがあります。
また、測定する腕は毎回同じ側にします(通常は右腕)。初回測定時には両腕で測定し、高い方の腕を以降の測定に使用します。
カフは心臓と同じ高さに保ち、腕を下げすぎたり上げすぎたりすると誤差が生じます。測定中は動いたり話したりせず、静かにしていることも重要です。
白衣高血圧と仮面高血圧
白衣高血圧とは
白衣高血圧とは、診察室では血圧が高く測定されるが、家庭や日常生活では正常血圧である状態を指します。
医療機関での測定時に緊張や不安を感じることで、一時的に血圧が上昇する現象です。白衣を着た医療従事者を見ると血圧が上がることから、この名称がつけられました。
白衣高血圧は、高齢者や女性に多く見られます。
この状態では、不必要な降圧治療を受けてしまうリスクがあるため、家庭血圧の測定が重要です。ただし、白衣高血圧の方は将来的に持続性高血圧に移行するリスクが高いという報告もあり、定期的な経過観察が必要です。
仮面高血圧とは
仮面高血圧は、白衣高血圧とは逆の状態です。診察室では正常血圧だが、家庭や日常生活では高血圧である状態を指します。
この状態は見逃されやすく、治療が遅れることで心血管疾患のリスクが高まります。
仮面高血圧には、早朝高血圧、夜間高血圧、昼間高血圧などのタイプがあります。
ストレス、喫煙、飲酒、睡眠時無呼吸症候群などが原因となることがあります。仮面高血圧を発見するためには、家庭血圧の測定や24時間血圧測定(ABPM)が有効です。
血圧測定の結果と対応方法
高血圧と判定された場合の対応
健康診断や人間ドックで高血圧と判定された場合、まず生活習慣の改善から始めます。
減塩(1日6g未満)、適正体重の維持、適度な運動、節酒、禁煙、ストレス管理などが重要です。これらの生活習慣改善だけで血圧が正常化することもあります。
生活習慣の改善を行っても血圧が下がらない場合や、最初から血圧が非常に高い場合(Ⅱ度高血圧以上)、糖尿病や腎臓病などの合併症がある場合は、降圧薬による治療が必要になります。
医師の指示に従って定期的に受診し、適切な治療を受けることが大切です。
家庭血圧の記録と活用
家庭血圧を測定する際は、必ず記録をつけることが重要です。
血圧手帳や専用のアプリを使用すると便利です。日付、時刻、血圧値(収縮期/拡張期)、脈拍、測定条件(体調や気になる症状など)を記録します。
記録した血圧値は、受診時に医師に見せることで、より適切な診断と治療方針の決定に役立ちます。
血圧の変動パターン、治療効果の判定、白衣高血圧や仮面高血圧の発見などに有用です。継続的な記録により、自分の血圧の傾向を把握し、生活習慣改善の動機づけにもなります。
まとめ:正確な血圧測定で健康を守る
血圧測定は、高血圧の早期発見と適切な管理のために欠かせない重要な検査です。
診察室血圧だけでなく、家庭血圧を継続的に測定することで、より正確な血圧評価が可能になります。高血圧の診断基準は、診察室血圧で140/90mmHg以上、家庭血圧で135/85mmHg以上です。
正確な血圧測定のためには、測定前に安静にする、正しい姿勢で測定する、決まった時間に測定するなどのポイントを守ることが重要です。
白衣高血圧や仮面高血圧といった特殊な状態もあるため、家庭血圧の測定と記録が推奨されます。
高血圧と診断された場合は、生活習慣の改善と必要に応じた薬物療法により、適切に血圧をコントロールすることが大切です。
定期的な血圧測定と医師との連携により、心筋梗塞や脳卒中などの重大な合併症を予防し、健康な生活を維持しましょう。










