「咳が2〜3週間続いているが、熱はそれほど高くない」「風邪と思っていたのになかなか治らない」――こうした症状を持つ方の中に、マイコプラズマ肺炎が潜んでいることがあります。マイコプラズマ肺炎は「歩く肺炎(walking pneumonia)」とも呼ばれるほど症状が比較的軽く、日常生活を続けながら感染していることに気づかないケースも多い疾患です。この記事では、マイコプラズマ肺炎の特徴的な症状、感染経路、治療法を詳しく解説します。
目次
マイコプラズマ肺炎とは
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)という微生物が引き起こす肺炎です。細菌とウイルスの中間的な性質を持ち、通常の細菌と異なり「細胞壁を持たない」という特徴があります。この特徴が治療薬の選択に大きく影響します。主に学齢期の子供・若者に多い感染症ですが、大人にも発症し、2024年には大流行した2016年以来の患者数が報告されています。
感染経路と潜伏期間
感染経路は主に飛沫感染と接触感染です。感染者の咳・くしゃみによって飛散した飛沫を吸い込むことで感染します。感染力は強くはありませんが、家庭内・学校・職場などの密接した集団の中でじわじわと広がる傾向があります。
潜伏期間は2〜3週間(平均14日前後)と他の呼吸器感染症より長いため、感染した時期が特定しにくいことも特徴の一つです。
マイコプラズマ肺炎の主な症状
マイコプラズマ肺炎の症状は典型的な肺炎と異なり、比較的緩やかに始まります。
長引く乾いた咳
最も特徴的な症状は乾いた(痰が少ない)咳が長期間続くことです。発症から1週間ほどで咳がひどくなり、肺炎になると3〜4週間以上続くことがあります。夜間や明け方に咳が悪化することも多く、睡眠の妨げになります。
発熱・全身症状
発熱は37〜38℃程度の微熱〜中程度の熱が多く、通常の細菌性肺炎のような高熱になりにくいです。頭痛・全身のだるさ・咽頭痛・鼻水なども伴うことがあります。症状が軽いため「ただの風邪」と判断されやすく、気づかずに感染を広げてしまうリスクがある点が問題です。
大人での症状の特徴
大人がマイコプラズマに感染した場合、子供より症状が重くなる傾向があります。胸の痛み・息切れが強く現れることがあり、重症化すると入院が必要になるケースもあります。また、まれに肺外合併症(皮膚発疹・関節痛・神経症状・心筋炎)が起こることがあります。
なぜペニシリンが効かないのか
マイコプラズマは細胞壁を持たないという構造的特徴から、ペニシリン系・セフェム系など「細胞壁合成を阻害する」作用の抗生剤が全く効きません。市販の抗生剤や病院で最初に処方されるペニシリン系薬では治療できないため、適切な抗生剤の選択が重要です。
マイコプラズマ肺炎の検査方法
マイコプラズマ感染を確認するための検査には以下のものがあります。
迅速抗原検査・LAMP法
のどぬぐい液や鼻腔ぬぐい液を用いた迅速抗原検査は比較的簡易に行えます。ただし感度が高くない場合があり、陰性でも否定できないことがあります。より精度の高い検査としてLAMP法(核酸増幅検査)があります。
血液検査・胸部X線
血液検査ではCRP(炎症反応)の上昇が確認されます。胸部X線や胸部CTで肺の浸潤影(白い影)が認められれば肺炎と診断されます。
有効な治療薬
マイコプラズマ肺炎の治療には、タンパク質合成を阻害する作用を持つ抗生剤が使用されます。
マクロライド系抗生剤(第一選択)
アジスロマイシン(ジスロマック)・クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗生剤が第一選択です。服用期間は3〜5日(アジスロマイシンの場合)〜7〜14日(クラリスロマイシンの場合)です。ただし、近年はマクロライド耐性株の増加が問題となっており、治療が効かない場合があります。
テトラサイクリン系・ニューキノロン系(第二選択)
マクロライド耐性の場合や成人に対しては、ミノサイクリン(テトラサイクリン系)やレボフロキサシン(ニューキノロン系)が使用されます。妊婦・小児(8歳未満)にはテトラサイクリン系は使えないため注意が必要です。
受診の目安と何科に行くべきか
咳が2週間以上続く場合や、発熱・呼吸困難・胸の痛みを伴う場合は、早めに呼吸器内科または内科を受診してください。市販薬での対症療法だけでは治癒しないため、適切な抗生剤治療が必要です。
まとめ
マイコプラズマ肺炎は「歩く肺炎」とも呼ばれ、比較的症状が軽いため気づきにくい感染症です。長引く乾いた咳・微熱が特徴で、ペニシリン系抗生剤は効かず、マクロライド系などの特定の抗生剤が必要です。2〜3週間以上咳が続く場合は自己判断で市販薬を使い続けず、呼吸器内科を受診して検査・治療を受けることが大切です。早期診断と適切な治療が早期回復と周囲への感染拡大防止につながります。










