眼圧検査とは?緑内障の診断・正常値・高眼圧症を徹底解説

眼圧検査は、目の中の圧力(眼圧)を測定する検査であり、緑内障の診断と管理に欠かせない重要な検査です。

緑内障は日本における失明原因の第1位であり、早期発見と適切な治療により進行を抑えることができます。本記事では、眼圧検査の方法、眼圧の正常値、高眼圧症と緑内障の違い、眼圧上昇の原因、そして検査結果への対応について詳しく解説します。

眼圧とは?目の中の圧力を理解する

眼圧とは、目の中(眼球内)を満たしている房水という液体によって生じる圧力のことです。

房水は、目の中の角膜や水晶体に栄養を供給し、眼球の形状を保つ重要な役割を果たしています。房水は毛様体で産生され、シュレム管から排出されるという循環を繰り返しています。

この産生と排出のバランスが適切に保たれることで、正常な眼圧が維持されます。

房水の産生が増えすぎたり、排出が悪くなったりすると、眼圧が上昇します。眼圧の単位はmmHg(ミリメートル水銀柱)で表され、血圧と同じ単位が使用されます。

眼圧の役割と重要性

適正な眼圧は、眼球の形状を保ち、目の機能を正常に維持するために必要です。

しかし、眼圧が高すぎる状態が続くと、視神経が圧迫されて障害を受け、視野が欠けていく緑内障を発症するリスクが高まります。視神経は一度損傷すると回復しないため、眼圧の管理が非常に重要です。

眼圧は一日の中でも変動します。通常、朝方に高く、夜に低くなる傾向があります。

また、体位や運動、飲水、薬剤などの影響も受けます。そのため、一回の測定だけでなく、複数回の測定や時間を変えた測定が診断に役立つこともあります。

眼圧検査の方法

非接触型眼圧計(空気眼圧計)

非接触型眼圧計は、目に直接触れることなく、空気を吹き付けて眼圧を測定する方法です。

健康診断や人間ドックで最も一般的に使用される方法です。検査を受ける人は、機器の前に座り、顎台に顔を固定して前方の光点を見つめます。

機器から「プシュッ」という音とともに空気が吹き付けられ、その瞬間の角膜の変形から眼圧が計算されます。

検査は数秒で終わり、痛みはありませんが、空気が当たるときに驚くことがあります。非接触型のため、感染のリスクがなく、点眼麻酔も不要で、スクリーニング検査として優れています。

接触型眼圧計(圧平眼圧計)

接触型眼圧計は、測定器具を直接角膜に接触させて眼圧を測定する方法です。

最も正確な測定方法とされており、ゴールドマン圧平眼圧計が標準的に使用されます。眼科での精密検査や緑内障の経過観察に用いられます。

検査前に点眼麻酔と染色剤を点眼します。

細隙灯顕微鏡(スリットランプ)に装着された測定器具を角膜に軽く接触させて測定します。麻酔をしているため痛みはありませんが、目に触れる感覚はあります。非接触型よりも正確な値が得られるため、診断や治療効果の判定に重要です。

その他の測定方法

他にも、携帯型の眼圧計や、特殊な状況で使用される測定方法があります。

シェッツ眼圧計は、仰向けに寝た状態で測定する古典的な方法です。アイケア眼圧計は、ハンディタイプの接触型眼圧計で、在宅医療などで使用されます。

最近では、コンタクトレンズ型の連続眼圧測定装置も開発されており、24時間の眼圧変動を記録できます。

これにより、通常の診察時には分からない夜間や早朝の眼圧上昇を発見できるため、緑内障の診断や治療に役立ちます。

眼圧の正常値と異常値

眼圧の正常値

眼圧の正常値は、一般的に10~21mmHgの範囲とされています。

統計学的には、健康な人の95%がこの範囲に入ります。ただし、正常値には個人差があり、正常範囲内でも緑内障を発症する人もいれば、正常値を超えていても緑内障にならない人もいます。

両眼の眼圧差が3mmHg以上ある場合は注意が必要です。

また、同じ人でも測定時刻や体位、季節などによって眼圧は変動します。一回の測定で判断するのではなく、複数回の測定値や他の検査結果も合わせて総合的に評価することが重要です。

高眼圧と緑内障の関係

眼圧が21mmHgを超える場合、「高眼圧」と判定されます。

高眼圧は緑内障の最も重要なリスク因子であり、眼圧が高いほど緑内障を発症するリスクが高くなります。しかし、高眼圧=緑内障ではなく、高眼圧があっても視神経障害や視野欠損がなければ緑内障とは診断されません

一方、日本人に多い「正常眼圧緑内障」は、眼圧が正常範囲内にもかかわらず緑内障を発症するタイプです。

日本の緑内障患者の約7割が正常眼圧緑内障と言われています。そのため、眼圧検査だけでなく、眼底検査や視野検査も合わせて緑内障の診断を行います。

高眼圧症と緑内障の違い

高眼圧症とは

高眼圧症は、眼圧が21mmHgを超えているが、視神経障害や視野欠損がない状態を指します。

高眼圧症の方は、将来的に緑内障を発症するリスクが高いため、定期的な経過観察が必要です。ただし、すべての高眼圧症が緑内障に進行するわけではありません。

高眼圧症の治療方針は、リスク因子(年齢、家族歴、近視、角膜の厚さなど)を総合的に評価して決定されます。

リスクが低い場合は経過観察のみ、リスクが高い場合は眼圧を下げる治療が開始されることもあります。定期的な眼底検査と視野検査により、緑内障への移行を早期に発見できます。

緑内障の診断

緑内障の診断は、眼圧検査だけでなく、複数の検査を総合して行われます。

眼底検査で視神経乳頭の陥凹拡大、視野検査で特徴的な視野欠損が確認されれば、緑内障と診断されます。画像検査(OCT:光干渉断層計)で、視神経線維層の厚さを測定することも診断に役立ちます。

緑内障には、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障の2つの主なタイプがあります。

開放隅角緑内障は、房水の排出路は開いているが排出能力が低下するタイプで、ゆっくり進行します。閉塞隅角緑内障は、排出路が物理的に塞がれるタイプで、急性発作を起こすこともあります。

眼圧上昇の原因

病的な眼圧上昇

病的な眼圧上昇の主な原因は、房水の排出障害です。

緑内障では、シュレム管の機能低下や隅角の閉塞により、房水が適切に排出されなくなります。ぶどう膜炎や外傷後の炎症でも、房水の流れが妨げられることがあります。

また、ステロイド薬の長期使用により眼圧が上昇することがあります(ステロイド緑内障)

白内障手術後や網膜剥離手術後にも、一時的に眼圧が上昇することがあります。糖尿病や高血圧などの全身疾患も、眼圧に影響を与えることがあります。

生理的な眼圧変動

眼圧は、さまざまな生理的要因によって変動します。

日内変動では、通常、朝方に高く、夜に低くなります。体位では、仰向けになると眼圧が上昇します。運動後は一時的に眼圧が低下し、逆に水分を大量に摂取すると一時的に上昇します。

カフェインやアルコールの摂取、喫煙も眼圧に影響を与えます。

女性の場合、月経周期やホルモンの変化により眼圧が変動することもあります。測定時の緊張やストレスでも眼圧は上昇するため、リラックスした状態で測定することが重要です。

眼圧検査の結果と対応

正常範囲内の場合

眼圧が正常範囲内(10~21mmHg)であっても、油断はできません。

日本人に多い正常眼圧緑内障の可能性があるため、眼底検査や視野検査で異常がないかを確認することが重要です。また、40歳以上の方、強度近視の方、家族に緑内障の人がいる方は、定期的な検査が推奨されます。

高眼圧と判定された場合

眼圧が21mmHgを超える場合、または両眼の眼圧差が大きい場合は、速やかに眼科を受診し、詳しい検査を受ける必要があります。

眼底検査、視野検査、隅角検査、OCT検査などにより、緑内障の有無や隅角の状態、視神経の状態を詳しく調べます。

高眼圧症と診断された場合は、リスク評価に基づいて治療方針が決定されます。

経過観察の場合は、3~6ヶ月ごとに眼圧測定と眼底検査、年に1回程度の視野検査を行います。治療が必要な場合は、点眼薬(プロスタグランジン関連薬、β遮断薬など)で眼圧を下げます。

緑内障と診断された場合

緑内障と診断された場合、治療の目標は眼圧を下げて視神経障害の進行を抑えることです。

一度失われた視野は回復しないため、早期発見と継続的な治療により、生涯にわたって良好な視機能を維持することが目標となります。

治療はまず点眼薬から開始します。点眼薬で十分に眼圧が下がらない場合や、視野障害が進行する場合は、レーザー治療や手術が検討されます。

緑内障は生涯にわたる管理が必要な疾患であり、定期的な受診と継続的な治療が非常に重要です。自己判断で点眼を中止しないようにしましょう。

眼圧を適切に保つための生活習慣

日常生活での注意点

眼圧を適切に保つためには、日常生活での工夫も大切です。

首を締め付ける服装やネクタイは避け、血流を妨げないようにします。うつぶせ寝や逆立ちなど、頭に血が上る姿勢を長時間続けることも避けましょう。

適度な有酸素運動は眼圧を下げる効果があります。

ウォーキング、ジョギング、水泳などが推奨されます。ただし、重いものを持ち上げる、息を止めて力む動作は眼圧を一時的に上げるため注意が必要です。禁煙、適度な飲酒、バランスの良い食事も目の健康維持に重要です。

定期検査の重要性

緑内障の早期発見には、定期的な眼圧検査と眼科検診が欠かせません。

40歳以上の方は年に1回、緑内障のリスク因子がある方はより頻繁に検査を受けることが推奨されます。特に、家族に緑内障の人がいる、強度近視である、糖尿病や高血圧がある場合は注意が必要です。

健康診断で眼圧の異常や眼底所見の異常を指摘された場合は、必ず眼科を受診してください。

緑内障は初期には自覚症状がないため、定期検査による早期発見が唯一の予防法です。視野が欠けていることに気づいた時には、すでにかなり進行していることが多いため、症状が出る前の検査が重要です。

まとめ:眼圧検査で緑内障から目を守る

眼圧検査は、目の中の圧力を測定し、緑内障の早期発見と管理に不可欠な検査です。

眼圧の正常値は10~21mmHgですが、正常範囲内でも緑内障を発症することがあるため、眼底検査や視野検査と合わせた総合的な評価が重要です。

高眼圧症は緑内障のリスク因子ですが、必ずしも緑内障に進行するわけではありません。

定期的な経過観察により、視神経障害への移行を早期に発見できます。緑内障と診断された場合は、継続的な治療により眼圧をコントロールし、視機能を維持することが目標となります。

40歳以上の方、緑内障のリスク因子がある方は、定期的な眼圧検査と眼科検診を受けることをお勧めします。

健康診断で異常を指摘された場合は、必ず眼科を受診してください。緑内障は早期発見・早期治療により、生涯にわたって良好な視力を維持できる疾患です。定期検査を習慣にし、大切な視力を守りましょう。

ABOUTこの記事をかいた人

20代のとき父親が糖尿病の診断を受け、日々の生活習慣からこんなにも深刻な状態になってしまうのかという経験を経て、人間ドックや健康診断を猛勉強。 数々の書籍などからわかりやすく、手軽に病気の予防に活用してほしいとの思いで「からだマガジン」を運営しています。